猫のボケ・痴呆

痴呆は、近年我々人間にとって非常に大きな問題となっています。高齢化が進み核家族化も進みその介護はとても大きな負担となります。 介護施設や介護ヘルパーの存在がクローズアップされ、身近にも家族の介護に当たられている人の存在があり切実な問題となっています。

人間と同様、猫を始めとするペットも急速に高齢化が進んでいます。
かつて、猫の平均的な寿命は8歳程度で10歳を超えれば大往生と言われていました。けれども、現在ではキャットフードの品質向上や動物医療の高度化などで10歳を迎える猫は当たり前で15歳、20歳という猫も数多く存在しています。
特に完全室内飼いの猫は、交通事故や感染症、ケンカによる怪我などのリスクが無く安定した生活環境が確保されているので長寿の傾向が一層高まっています。
長寿であること事態は、喜ばしいのですがやはり痴呆や介護への不安は払拭できません。


猫はボケるのか

さて、猫はボケるのでしょうか。
かつて猫は10歳未満で亡くなるケースが多く、ボケる前に寿命を迎えていたので痴呆の存在に気付かなかっただけで、 人間と同じ哺乳類ですし、基本的な脳の構成はほぼ同一ですから加齢による痴呆は発生します。
また、アメリカのサイトなどを読むと若年痴呆の主要因であるアルツハイマー病も猫など高等な哺乳類には起こりえる事が論じられています。
しかしながら、ボケる猫もいればそうでない猫もいるわけで個体差はかなり大きなものがあります。


猫がボケる確率

残念ながら具体的な数値はありません。
猫のボケに関する研究はあまり進んでいませんし、研究者がほとんどいないのが現状のようです。
しかし、獣医師さん飼い主さんの話や関連サイトを覗いてみると、深刻になるほどの確率ではないように思えます。
少なくとも、犬よりはかなりボケる確率は低いと言えます。
アメリカやイギリスなどのサイトを読んで見ると15%〜10%以下との推定値が提示されている所もります。
ただ、猫は基本的に単独生活者でマイペースな生き方をする動物ですし、痴呆の症状の主たる物が「だだ、ひたすら寝る」であるので、犬のように痴呆症状が飼い主さんに分からないケースも多いようです。
気付いた時には、もう天寿をまっとうする寸前であったとのケースがかなりの数に登ると推定されます。


ボケの症状

いくつか論じられている猫の痴呆症状があります。以下にそれらを紹介します。
上段は痴呆の比較的前段階の症状、下段はかなり進行した痴呆症状としています。但し、傾向としての分類であって医学的な根拠はありません。
          ・異常摂食−食べ物を年中食べている。
          ・攻撃行動−飼い主への攻撃。
          ・破壊行動−柱や家具などに噛み付く。
          ・狭いところに入り込んで自力では出てこれない−前進できても後退できない。
          ・恐怖心増大−ちょっとしたことでもすくんでしまう、平気だったブラッシング時に「フー」と威嚇する。
          ・同じところをぐるぐる回る。

          ・夜中に鳴きながら徘徊する。
          ・トイレの位置が分からなくなって粗相する。
          ・失禁。
          ・自己損傷−自分で自分を咬んで傷つける。
          ・食欲減退−ほとんど食べない、食事の要求が無くなる。
          ・無反応−人や動物に対して反応しなくなり、飼主にも反応しない、撫でてもゴロゴロ言わない。
          ・1日中寝ている


ボケの予防

色々と調べてみましたが、絶対的な予防法は確立されていません。これは人間と同様で脳のメカニズムがあまりにも複雑であるので まだ抜本的な療法が存在しないようです。
一般的に言われている予防法としては、
          ・食事の管理−ナトリウム、リン、蛋白質の摂取量の制限、カロリーの制限、消化吸収の良い食品の選択。
          ・飼い主とのスキンシップの充実−不安感の除去やストレスの軽減。
          ・遊びを工夫−脳の刺激。
          ・定期的な健康診断−老化の進行状況の把握と早期治療


介護について

比較論としてですが、犬に対して猫の介護はかなり楽といえます。
もちろん、飼い主さんの精神的な負担はあるのですが、肉体的な負担という観点では猫の方が容易です。
小型犬ならそうでもないのですが、中型・大型犬となると体重が15〜50kgとなるわけですから、女性ひとりでは持ち上げるだけでも一苦労です。
その点、猫は両手で簡単に持ち上げられますので介護作業も楽に行えます。
また、犬の痴呆症状として問題視されている四六時中大きな声で鳴き続け、家族や近所に大きな負担や迷惑がかかる事が上げられています。これについても、猫の場合は大きな声といっても限度はあります。犬のキャンキャンや遠吼えが24時間続くよりはるかに救われます。

猫の介護で最も深刻なのは排尿排便に関する問題です。
所構わずウンチやオシッコをするので、面倒と思われるかもしれませんがその都度、処理し家と猫を清潔な状態にしましょう。
粗相をした時に、怒るのは決してプラスになりません。
むしろ、恐怖心を増大させたり飼い主さんへの信頼感の喪失、さらには飼い主への攻撃行動へ発展する事例も報告されています。
また、介護用のおむつパンツも販売されていますので、これを利用されるのもひとつの方法です。吸収性が高いのでオシッコには効果的です。

逆に、痴呆が進行すると排尿・排便がスムーズにできない猫も出てきます。
この場合は、飼い主さんが膀胱を圧迫してオシッコを出させたり、浣腸によって排便させる必要が出てきます。
この状態が飼い主さんにとって一番きついのですが、長年のパートナーだったのですから頑張っててください。
また、このような状態になったときには必ず動物病院で診察を受け適切な治療を行い、排尿排便の方法を詳しく教えてもらってください。
特に、猫の浣腸は人間とは違いかなりデリケートな部分がありますので、人間用の浣腸薬を使うなど安易な事は行わないでください。

次に、床ずれについてです。
痴呆の典型的な症状として上げられるのは、とにかくよく寝ることです。
通常の場合でも猫は寝る事が大好きですが、痴呆の猫の場合は本当に寝続けます。通常の猫の場合は、1時間〜3時間程度寝ては起きて食事などをします。また、寝る場所も時間によって変えるケースも多々あります。
しかし、痴呆猫の場合は同じ寝床で10数時間も寝続けるケースがあります。
このような猫の場合、まれに床ずれになる事があります。予防のためには、柔らかなタオルなどを寝床に敷くなどしてあげてください。

最近では、ペットシッターさんの一部がシステムとして「訪問介護・介護補助」というサービスを設けているところもあります。
当然費用はかかりますし、24時間対応ではありませんが3、4時間だけでも介護から開放されるのは飼い主さんにとってもありがたい事ですから、利用について考慮されるのも有意義ではないでしょうか。


痴呆猫と向き合う

痴呆が進行した場合、飼い主さんには回避不可能な問題が発生します。
愛猫が痴呆になれば動物病院での診察や治療を受けることになると思います。
最近ではペット用の痴呆改善薬もあるようで、痴呆症状の軽減や進行速度の低減なども可能になりつつあるようです。
けれども、これらの薬は根治薬ではありませんので、いずれ深刻な痴呆へと推移して行くことになります。
この時に、獣医さんから安楽死について提案がなされるはずです。(一部の獣医さんは安楽死という選択肢を認めない方もいます。)
猫自身の苦痛を永遠に開放するという側面もありますが、飼い主さんの精神的、肉体的そして治療費などの金銭的な負担などが考慮され、 獣医さんがこの飼い主さんは介護に関して限界に達していると判断された際に提案されることが多いようです。
これまでに述べたように、猫が重篤な痴呆に陥る可能性は低いのですが、可能性自体否定されるものではありません。
安楽死か負担を感じながらも介護に努力し続けるのか、二者択一の厳しい状況です。

愛猫家である私から理想を語れば、人間には安楽死は認めていないのに、猫に安楽死が行われる事に抵抗を感じます。
同じ命として、長期に渡って家族として生活してきなのですから、苦しくとも最後まで付き合いたいと思っています。

けれども、一人暮らしで生活されている方や、ご高齢の方のことを考えると心が揺らぎます。
家族が3〜5人程度おられて、一人だけに介護の負担がかからなければ良いのでしょうが、一人暮らしではそれは無理です。
お勤めの方なら、仕事を辞めることになったケースも現実あります。
また、治療費などの負担もご高齢の方にとっては厳しい問題です。
このような場合は、安楽死という選択もしかたがないことなのかもしれません。
重要なのは、安易に安楽死を選択しないことです。愛猫に対して、誠意と愛情をもって可能な限り精一杯努力し尽くしたと思えるのでしたら、 安楽死の選択も間違いではないと考えたいと思います。
精一杯努力し尽くしたのなら、精神的な苦痛があってもその後の生活や人生を何とか乗りきっていけるでしょうし、飼い主さんが猛烈な精神的苦痛を味わった事を愛猫はきっと理解し感謝すると思います。

今は、若く健康であっても老いと死は必ずやってきます。
考えたくない問題ですが、自分がどう対応すべきかたまには考えてみるのも良いのではないでしょうか。

今、わたしの猫は蒸し熱い気候にもかかわらず、この文章を打っているパソコンのディスプレーの上でぐっすりと寝ています。 パソコンへの抜け毛の影響が心配です。

        

HOME